レム睡眠行動障害はストレスで悪化します。治療のため何科に行けばなど病院選びにはちょっとしたコツがあります。レム睡眠行動障害の原因は未だ半数は不明です。認知症など病気との関連も少なくないので、侮ってはいけません …
レム睡眠行動障害は中高年(40〜50代以上)の男性に多いようです。
発症率としては中高年のおおよそ0.5%と言われていますが、発症患者の9割は男性のためアラフィフの男性や夫婦は必見です。
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レム睡眠とは
人はレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)によって眠ります。
この時、一部を除いて全身の筋肉が脱力状態となります。イメージで言えば、金縛り状態と言っても過言ではありません。レム睡眠中に、人は情報の整理や記憶の定着を行なっているため夢を見たりします。脳は活発に働き、交感神経は多少緊張しています。
このようにレム睡眠は、脳のスイッチは入れたまま体を休息させることから、「体の睡眠」とも呼ばれています。
レム睡眠行動障害とは
レム睡眠行動障害(REM Sleep Behavior Disorder : RBD)は寝ているのに動いてしまう事です。
本来であれば、人は眠っている時(レム睡眠中)には動く事が出来ません。しかし、何かしらの原因によってレム睡眠中に動き出してしまう事をレム睡眠行動障害と呼びます。具体的な症状は夢の行動化と呼ばれ、夢の内容に沿った行動を起こしてしまい激しい寝言や叫び声を上げたり、暴れ回ってしまいます。
レム睡眠は朝方に多くなるため、レム睡眠行動障害も朝方に集中する傾向があります。レム睡眠行動障害の特徴のとして代表的なものに、声をかける、揺り起こすなどすれば簡単に覚醒する事が挙げられ、夢の内容もはっきり報告する事が出来ます。
レム睡眠行動障害と夢遊病(睡眠時遊行症)との違い
レム睡眠行動障害と夢遊病は違います。
夢遊病とは、主な睡眠時間帯の最初の1/3に起きます。昼寝など補助的な睡眠時にはあまり起きません。症状は1~10分と短時間ですが、1時間に及ぶこともあります。
夢遊病は、寝ぼけ、夜驚症、夜尿症に共通したノンレム睡眠時随伴症の1つで、多くは成長するにつれて、自然治癒します。有病率は子どもに高く、4~8歳がピークです。通常は青年期以降に自然消失するため、大人の睡眠時遊行症はまれです。
レム睡眠行動障害との大きな違いは、声をかける、揺り起こすなどしても覚醒しづらい(反応がない)事です。無理やり覚醒させるとしばしば錯乱状態になり、攻撃的な行動に出る場合もあります。そのため、大声で呼びかけたり揺さぶったりして起こそうとするのではなく、ベッドに戻るよう穏やかに促すのが望ましいとされています。
レム睡眠行動障害チェックリスト
簡単なレム睡眠行動障害チェックリストを紹介しておきます。
- 睡眠中に、大きな声でストーリーのある寝言を言ったり、笑ったり、説教をしているようだといわれたことがある。
- 睡眠中に手足を振ったり、黒板に字を書くような格好をしたり、急に布団に座ってしゃべりだしたりするといわれる。
- 夢を見ていてベッドから落ちて怪我をしたり、夢で出てきた邪魔なものを蹴飛ばしたら室内にあったテレビやタンスあるいは壁などが壊れてしまっていた。
- 夢の中で、動物に追われて部屋を逃げ回ったり、ベッドの近くのものを夢の中で動物に投げたつもりが、本当に物を投げてしまっており、室内が壊れた。夢を見ていて、となりで寝ている人の首を締めたことがある。
- 夢遊病のようにベッドや布団から出て、室外に出ようとしたり、家の外に出たことがある。
- 異常行動をしている時に起されると、すぐに目覚め、夢を見ていた内容が思い出され、異常行動と一致している。
レム睡眠行動障害の原因
レム睡眠行動障害には一部に原因があります。
一般的には、脳の加齢変化による神経伝達障害と、ストレスや過去の嫌な記憶、不安、過度の飲酒など心身状態の乱れが結びついたときに起こりやすくなる病気として認知されています。
他にも基礎疾患として、脳幹部の脳腫瘍、パーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レヴィー小体病などいくつかの原因が考えられていますが、約半数は基礎疾患を持たず、原因不明だと言われています。
レム睡眠行動障害はストレスで悪化する
レム睡眠行動障害とストレスには深い関係があります。
レム睡眠行動障害は、ストレス過多によって悪夢を見やすくなっていることに起因する例が少なくありません。夢を行動化する訳ですから、症状も悪化してしまいます。
ストレスマネジメントと一言で言えるほど、ストレスの管理は簡単ではありませんが、レム睡眠行動障害の疑いがある場合にはストレスを軽減、もしくは発散させる事も効果がある事は抑えておきましょう。
レム睡眠行動障害と認知症
レビー小体型認知症の患者は、夢と一緒に身体を動かすことがあります。
レビー小体型認知症とは、認知症の20%を占める病気で実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴です。認知症の症状が明らかになる前からレム睡眠行動障害が出現しやすいこともわかっているので認知症の疑いがある人は注意が必要です。
他にもレム睡眠行動障害は、パーキンソン病との関連も指摘されています。レム睡眠行動障害の診断後10年で75%、14年で90%がパーキンソン病などを発症するという報告さえあります。
レム睡眠行動障害の治療
レム睡眠行動障害は治療できます。
睡眠ポリグラフィー検査(PSG)によって確定診断とする場合が多く、治療については、クロナゼパムを寝る前に服用する方法(8割の患者が症状を緩和)が一般的です。
他には、メラトニンというサプリメントを用いる事で高齢者にも安心して投与できるようです。またある種の抗うつ薬でも効果があります。いずれの薬を服用するかは、効果と副作用を考慮して、主治医とよく相談して決めるべきでしょう。
レム睡眠行動障害は何科?
レム睡眠行動障害は神経内科です。
睡眠障害としての診察であれば、精神科や心療内科を始め、睡眠障害に特化した睡眠外来が近くにあれば相談するのも良いかもしれません。何科よりも大切な事は、レム睡眠行動障害の検査環境が整っているかどうかです。
レム睡眠行動障害の病院
レム睡眠行動障害の病院選びがあります。
レム睡眠行動障害を確定診断とするには、先ほど説明した睡眠ポリグラフィー検査(PSG)の検査環境のある病院を事前に調べてダイレクトに受診するのが手っ取り早いでしょう。多くの場合、「ポリグラフィー検査 + 地名」で検査環境のある病院やクリニックを検索できます。お住まいの近くにある病院を探してみましょう。
まとめ
レム睡眠行動障害は治療できます。
何れにしても、疑いがある場合には早めの診察をおすすめします。大人になっても夢遊病っぽいと思う節があれば、多くの場合はレム睡眠行動障害の可能性が高くなります。
あとがき
レム睡眠行動障害を侮ってはいけません。
寝室を共にするパートナーにとっては恐怖感を感じてしまうからです。わざと夜中に殴って知らんふりをしていると誤解される事も少なくないため、夫婦関係がおかしくならないように配慮する必要があります。