ナルコレプシーの根本的な原因は未だに不明なことが多いため、根治的治療方法はありませんが、対症的療法で大きな改善が期待できます。現時点でわかっているナルコレプシーの原因を整理しました …
ナルコレプシーの特集記事はこちら ↓
第1回 ナルコレプシーのセルフ チェック法!居眠り病の可能性も!?
第2回 ナルコレプシー と は?【健常者の眠気との違い・リスク】
番外編 その1 睡眠麻痺はトラウマになる【対処と治療まとめ】
番外編 その2 入眠時幻覚が怖い!【恐怖の実態と現実】
第5回 ナルコレプシーの病院選び【2019最新版・都道府県別】
ナルコレプシーがどんな睡眠障害か、それはわかったけど実際に何故その眠気は起きるの?
当然な疑問だと思います。原因がわかれば、予防するための対策もできるのに、、、結論から言うと、ナルコレプシーの根本的な原因は、未だにわかっていません。なので、現状でわかっている原因を、まとめて説明します。
目次はこちら
ナルコレプシーのメカニズム
ナルコレプシーの原因は、神経伝達物質であるオレキシンの不足によって、睡眠と覚醒が自分でコントロール出来なくなってしまうことがナルコレプシー発症の引き金とされています。
オレキシンは覚醒状態の適切な維持・制御に重要な役割を持っています。このオレキシンは脳の視床下部から分泌され、分泌量が足りないと眠くなり(睡眠)、十分な分泌量であれば目が覚めます(覚醒)。ようは、日中に何かしらの理由でこのオレキシンの分泌量が急に減ってしまうので、意識を失うほどの眠気を伴い眠ってしまいます。
ナルコレプシーの2大原因(要因)
一般的にナルコレプシーは2つの病態生理(異常を起こしている原因)があります。
睡眠・覚醒リズムの乱れ(睡眠の多相化)とレム睡眠の乱れです。
睡眠の多相化
睡眠が多相化してしまうというのは、昼間に居眠り、夜は深い眠りができず浅い眠りを繰り返してしまうようになります。
まさに多相型の睡眠は、赤ちゃんのような眠りに近づいていると言っても過言ではありません。多相睡眠とは分割睡眠とも呼ばれ、1日に複数回の睡眠をとることです。
人工照明発明以前の人類が行っていた動物の一般的な睡眠法とも呼ばれ、健常者であれば、夜にだけ眠る単相睡眠よりも、昼寝や仮眠などを活用して多相睡眠の方がエネルギッシュな活動が出来るという考え方もあります。
一方でナルコレプシーは、睡眠の多相化を自らの意思で行えていないことに問題があります。
分割睡眠(多相睡眠)は、こちらの記事で詳しく説明しています。↓
レム睡眠の乱れ
一般的には人は眠りにつくと、レム睡眠(浅い眠り)ではなくノンレム睡眠(深い眠り)から入ってゆきます。
しかし、ナルコレプシーはレム睡眠から入ってしまうため、睡眠発作、情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚、夜間の睡眠障害などの症状が起きてしまいます。ナルコレプシーの症状の多くは、日中の活動中に突然レム睡眠が割り込んだり、覚醒から睡眠への移行期にレム睡眠が割り込むことで起きています。
ナルコレプシーの根本的な原因
実はナルコレプシーは未だに完全に解明された睡眠障害ではありません。
ナルコレプシー患者の子供に40倍の発症リスクが認められることから、遺伝学的原因が示唆される一方で、双生児間の一致率が低い(25%)ことから、環境因子の顕著な役割も示唆されているものの、何故こうした症状が起こってくるのか、根本的な原因はまだ分かっていません。
冒頭に説明したレキシン神経細胞の機能が低下する原因でさえ未だに不明です。日本人の場合、白血球の血液型であるHLAとの関連性も報告されていますが、ナルコレプシーの病態生理と直接関わりあいをもつか否か、今後の更なる研究次第というのが現状です。
補足;HLA(ヒト白血球抗原)とは
HLA(Human Leukocyte Antigen)は1954年、白血球の血液型として発見され、頭文字をとって『HLA』と呼ばれるようになりました。
例えば、一般的に血液型というとA,O,AB,B型といった赤血球の型を指しますが、HLAは白血球の型を示すということ。
まとめ
ナルコレプシーのメカニズムがわかっているため、効果的な治療法や治療薬は既に臨床データも多くあります。
根本的な原因が未だに不明なため、根治的治療方法はありませんが、対症的療法で大きな改善が期待できます。薬物療法により、夜の眠りを安定させ、さらに精神賦活剤を朝と昼に服用することにより、日中の居眠りをほとんどなくすことだって出来るようになります。
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あとがき
治療は対症的療法のため、長い年月がかかる場合が多いので、根気よく続ける気構えが求められます。
実際には完治というよりも、薬を大幅に減らすことが出来る、ようになるという声が多いようです。