過眠症は治療できます。診断には専用機器を使って検査を行えば正確に今の状態を確認することが出来ます。過眠症の疑いがある場合、日常生活や仕事に影響が出る前になんとか診断、治療しておきたい…
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総集編 過眠症の全て【総集編まとめ】
私、過眠症かも。
そう思えたことはとてもラッキーで、自覚症状がない人も多いので、治療どころか診断できないのが過眠症の怖いところ。ただの睡眠不足だろう、そう思っていて日常生活や仕事で、影響が出て初めて気付く場合や、職場の上司や家族に指摘されて、診断してみて気づいたというケースは少なくありません。
目次はこちら
- 1 過眠症の診断基準とは
- 2 睡眠検査(診断テスト)まとめ
- 3 睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography:PSG)
- 4 睡眠潜時反復検査(Multiple Sleep Latency Test:MSLT)
- 5 覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test:MWT)
- 6 番外編;過眠症以外の睡眠障害検査(診断テスト)
- 7 CPAP圧設定検査
- 8 下肢不動化示唆検査(Suggested Immobilization Test:SIT)
- 9 アクチグラフ検査(睡眠・覚醒パターンの測定)
- 10 アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)
- 11 過眠症の治療法
- 12 まとめ
- 13 あとがき
過眠症の診断基準とは
過眠症の種類は大きく分けて、原発性過眠症、特発性過眠症、反復性過眠症、月経関連過眠症の4種類です。
ザックリ言うならば、1日10時間以上の睡眠を最低2週間は常に取っている状態で、日中に何度も居眠りをしてしまう場合に過眠症と診断されます。
他には、少なくとも3ヶ月間、週に少なくとも3回の症状が持続し、それが著しい苦痛や機能の障害をもたらしており、他の精神障害や、医学的疾患、薬物の影響ではないことが診断基準であるなど複数の診断基準はあれど、睡眠不足による症状は含まれないという点は、診断基準に共通しています。
過眠症ごとの詳しい診断基準などはこちらの記事でも紹介します。↓
睡眠検査(診断テスト)まとめ
睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography:PSG)
- 目的: 夜間睡眠の状態を調べることで、夜間睡眠の異常や、日中の眠気の原因を診断
- 所要時間: 1泊検査
体に複数のセンサー類を装着した状態で一晩過ごします。
医師の指示により、装着するセンサーを追加する場合があります。夕方以降からセンサー装着を始め、消灯後は雑誌・本を読んだり、携帯電話・ラジオなどの電気製品を使用することはできないのが一般的です。
睡眠潜時反復検査(Multiple Sleep Latency Test:MSLT)
- 目的:昼間の眠気を客観的に評価することで、過眠症の診断と重症度判定
通常、終夜睡眠ポリグラフ検査の後に続けて、翌日の日中に行います。
2時間ごとに、4回から5回、暗い部屋のベッドで横になって、昼寝します。健康保険の適応が出来ますが、すでに治療中の場合適応とならないこともあります。
覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test:MWT)
- 目的:眠気を誘う状況下において、我慢して起きていられる能力を判定する検査です。 危険業務や運転の適性を診断する材料になります。
2時間ごとに4回、薄暗い部屋の中で座イスに座り、眼を開けたまままっすぐ前を見て安静に過ごします。
1回の検査所要時間は40分です。薬物治療効果の診断にも役立つ検査です。現在、健康保険の適応は出来ません。
番外編;過眠症以外の睡眠障害検査(診断テスト)
CPAP圧設定検査
- 目的:PSG検査にて睡眠時無呼吸症候群と診断された人のうち、医師が必要と診断した場合にCPAPという治療器を使います。CPAPは空気圧を用いて治療しますが、必要な圧力(治療圧)は人によって大きく異なります。CPAP圧設定検査ではこの治療圧を調べる検査です
- 所要時間:1泊検査
PSG検査とほぼ同様のセンサー類を装着します。
鼻にCPAP用のマスクを装着し、空気圧をかけた状態で一晩過ごします。検査中はなるべく鼻のみで呼吸をしますので、鼻詰まりがある際は検査技師に相談しましょう。夜間、検査技師がモニターしながら空気圧を調整するので、途中目が覚めたときに空気圧が開始時よりも強くなっている可能性があります。
中途覚醒時は圧を下げますが、高い空気圧で再入眠できるか確認をするために、しばらく圧を維持する場合もあります。
下肢不動化示唆検査(Suggested Immobilization Test:SIT)
- 目的: 夜間の下肢(四肢)不快感の強さを調べ、むずむず脚症候群の診断の際の参考にします
- 所要時間:PSG検査夜の21時から22時までの1時間
ベッド上の座イスに足をまっすぐ伸ばした状態で、1時間ほど過ごします。
1時間の間、下肢の不快感が出現しても、動かしたり、手でさすったりしないでください。10分ごとに下肢の不快感の強さを記録紙に記入するのが一般的です。
アクチグラフ検査(睡眠・覚醒パターンの測定)
- 目的:睡眠と覚醒の日内分布を客観的に評価するために、活動量を診断する検査です
- 検査期間:1〜2週間
腕時計式の装置を利き腕とは反対側の手首に装着して活動量を測定します。
機器は水に弱いので、水を使う際(炊事、入浴など)には外しますが、それ以外は睡眠中も含め常に装置を装着して生活します。現在、保険適応はありませんが、不眠症や概日リズム睡眠障害の程度を把握する上ではきわめて重要な検査です。
アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)
- 目的:睡眠中に生じる周期的な下肢(または上肢)の運動(ぴくつき)を診断します
- 検査期間:自宅で3〜5晩の測定(夜間のみ)
夜、就寝前に、左右の足首(または手首)に小型の装置を装着して、眠ります。
翌朝、起床後に機器を外します。足や腕のぴくつきは、日によって回数が変動しますので、自宅で複数夜の連続測定を行います。現在、保険適応はありませんが、周期性四肢運動の日差、治療効果や経過を把握する上で重要な検査です。
過眠症の治療法
過眠症の治療法は過眠症によって異なります。
今回は、一般的な過眠症の治療法を紹介します。
原発性過眠症
治療としては夜間睡眠の異常があれば規則正しい睡眠習慣に戻し、日中に残る過眠に対しては覚醒効果をもつ精神賦活剤(ふかつ)を朝と昼に投与し治療します。
特発性過眠症
発症件数が少ないため、治療法が十分に研究されていません。
通常の精神賦活薬では効果がみられないことが多く、メタンフェタミンやモダフィニルが効果のある場合があります。
反復性過眠症
病相期が始まると治療は困難なことが多く、むしろ病相を予防するための薬物療法による治療が工夫されています。
原発性過眠症
睡眠の質を高める生活習慣、専門家によるカウンセリング、経口避妊薬を併用することが治療に効果的とされています。
まとめ
眠気の原因となるものは多く、中枢神経賦活薬の誤った投与を避けるためにも、きちんとした診断と治療が重要になります。
典型的な中枢性過眠症(特発性過眠症など)の診断は、専門医からすれば過眠の原因や経過を注意深く鑑別することで診断は十分に可能なことが多いと言われています。治療では薬物療法と併用し、睡眠時間の確保と睡眠衛生を徹底させることが、治療する上で大切になります。
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あとがき
記で紹介したような診断・治療環境の整っている専門的な睡眠クリニックは、正直どこにでもあるようなものではありません。
しかし、最近では全てではなくとも最低限、睡眠ポリグラフ検査だけはできるよ、と言うような診断・治療が出来るクリニックも増えてきました。最近はホームページで、検査できる機器など診断・治療方法を紹介しているような、ところも増えていますので確認してみましょう。
住んでいる地域になければ、検査旅行と銘打って足を運ぶのも手。睡眠障害の疑いがあれば、早めに診断に訪れてみましょう。
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