仰臥位とは?妊婦は知っておきべき仰臥位低血圧症候群。仰臥位の読み方、英語表現、仰臥位と関係の深い褥瘡と好発部位、看護や介護者は知っておきたい仰臥位から側臥位・端座位への手順など仰臥位の全てをお届けします …
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第5回 仰向けで寝るなら知らないと損!
第8回 仰臥位の全て【徹底解説】
第10回 横向き枕で失敗しない3つの選び方
第11回 横向きで寝るメリットとデメリットまとめ【徹底解説】
第15回 うつ伏せ枕で失敗しない選び方
第16回 うつぶせ寝は赤ちゃんと大人で違う?【正しいうつ伏せ寝】
仰臥位シリーズはこれで最終回。
仰臥位を深掘りした特集は全3回で下があっという間でした。今日は仰臥位の総集編とも言えるような内容で仰臥位シリーズのサマリーも書き下ろしました。
目次はこちら
仰臥位とは
仰臥位とは、ぎょうがいと読みます。
あくまで仰臥位は専門用語で、一般的には仰向けのことです。仰臥位とは背臥位とも呼ばれ、ヒトの解剖学やその応用である介護・看護学、スポーツ医学やその他分野(人間工学など)では体位の一般的な表現方法として定着しています。
仰臥位は、その性質上最も休息効率の良い体位だと呼ばれています。その理由として、仰臥位は筋肉への負担が少なく、重心が安定しているため、人体としてエネルギー効率が良く理想的な体位だとされています。
一方で、頭部・体幹・四肢の各部が心臓とほぼ同じ高さとなってしまうため、心臓への負担をかけてしまう側面(デメリット・リスク)もあります。仰臥位とは何か、詳しくはこちらの記事で説明しています。↓
仰臥位の英語表現
仰臥位(仰向け)の英語表現を紹介します。
基本的に、仰臥位は専門用語のため、supine や supine position と表現します。Proneと言うこともあるようです。また、日常会話では日本語でも仰臥位より仰向けと表現するように英語では、face up と表現することが多くなります。
多くの場合には、lie down(横たわる、寝る)という表現とセットで使うことが一般的です。Lying on your back(仰向けで)という表現も使ったりします。lie on の代わりに、get on と使ったりするのもOKです。(sleep on と表現するのを聞いたこともあります)back というのはここでは「後ろ」ではなく「背中」という意味で使っています。
仰臥位低血圧症候群
仰臥位低血圧症候群とは、仰臥位によって引き起こされる貧血症状のようなものです。
一般的には、妊娠中期から後期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際に感じやすいと言われています。妊婦の場合、胎児や羊水で大きくなった子宮が血管を圧迫し、血行不良となってしまうのが仰臥位低血圧症候群の原因です。
その結果、悪心・嘔吐、生あくびなど貧血症状に似たような症状を引き起こしてしまいます。対処法は仰臥位から横になるなど体位変換すると、解消されます。
多くの場合は、帝王切開前の麻酔時などに起こってしまうようで、放っておくと胎児が低酸素状態となってしまうなど危険な状態となってしまいます。仰臥位低血圧症候群はこちらの記事で詳しく説明しています。↓
仰臥位と褥瘡(じょくそう)
褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。
一般的に、床ずれとも呼ばれています。仰臥位だと長時間そのまま体位を固定してしまうため褥瘡が出来やすいと言われています。太め・ぽっちゃりだと、脂肪がクッションになって褥創はできにくいのですが、細くて骨がでっぱっているタイプだと、仰臥位などの時に集中して圧がかかって褥瘡ができやすくなります。
仰臥位の褥瘡好発部位は?
仰臥位だと褥瘡の好発部位があります。
自分で体位変換ができず長期間寝たきりで、栄養状態が悪い、皮膚が弱くなっている(高齢者、排泄物や汗により皮膚のふやけがある、むくみが強い、抗がん剤やステロイドなど薬の副作用で免疫力が低くなっている)人が、圧迫だけでなく摩擦やずれなどの刺激が繰り返されている場合は褥瘡になりやすいといえます。
骨が突き出した部位は強く圧迫されて、褥瘡ができやすくなります。褥瘡のできやすい部位は、寝ているからだの向きや姿勢によって違ってきます。仰臥位だと、後頭部、肩甲部、仙骨部、かかとなど大きく4箇所が褥瘡好発部位だと言われています。
仰臥位から側臥位(そくがい)への手順(全介助)
仰臥位から側臥位(横向き)へ体位変換する手順を紹介します。
側臥位とは、横向きに寝ている状態のことです。 右側を下にした姿勢を右側臥位、左側を下にした姿勢を左側臥位といいます。 身体のバランスを保ち、リラックスした安定性を保持するために腰を引き、くの字の状態にします。
一般的に、着替え・オムツ交換・シーツ交換の時などに行います。特に寝たきりの方の場合は、褥瘡(床ずれ)や血行障害等を防ぐためにも、寝返り(体位交換)介助が必要です。
- 介助者は寝返りする側に立ち、ベッドに片膝をつきます
- 高齢者の両膝を片足ずつゆっくりと立てます
- ご齢者の両腕を胸の前で組んでいただきます
- 無理のない範囲で頭を少し上げて、顔(視線)を寝返る側に向けます
- 膝と肩を支えながら、ゆっくりと寝返る側(手前)に引きます
仰臥位から寝返る(体位変換)ポイントは2つです。
まず、膝を曲げる・腕を組む・頭を上げることで、支持基底面(ベッドとの接地面積)を狭くします。そして、寝返る側に顔を向けることで、重心を移すことです。
仰臥位から端座位(たんざい)への手順(全介助)
仰臥位から端座位(座る)へ体位変換する手順を紹介します。
まず、端座位とは座位の1つで、ベッドの端に腰をかけ横に足を下ろした体位です。一般的に、お食事や入浴、排せつなどのために離床するときに必要です。仰臥位からの起き上がり介助では、ベッドからの転落に十分気をつけましょう。
- まず寝返る方向の反対側に高齢者の身体をずらし、腕をつけるスペースを確保します
- 起き上がる側に寝返り介助(上記1)を行い、高齢者の身体を横向き(側臥位)にします
- 介助者は、高齢者がベッドの端に座った際に身体を支えられる位置に立ちます
- 介助者の腕を高齢者の首の下から差し入れ、もう片方の腕は高齢者の膝に添えます
- 高齢者の両足(膝から足先まで)をベッドからおろします
- 高齢者の上半身を起こし、ひじ立ちの状態になるようにします
- てこの原理を意識し、臀部を軸にして頭が孤を描くように起こします
- ベッドの端に深く座ったら(端座位)、倒れないように支えます
仰臥位から起き上がり介助のポイントは2つです。
まず、高齢者との間に適度なスペースを作り、高齢者の動きの邪魔にならないように気をつけます。次に、車いすに移乗する場合は、予め車いすを適切な位置にセットしておきます。
仰臥位による褥瘡(床ずれ)口コミ
入院中の祖母が風邪をこじらせて肺炎になりました。
仰臥位を続けた結果、腰~お尻のあたりに床ずれができてきたらしく心配しています。肺炎の治療のため、肺にたまった水を抜くなどして仰臥位から体位変換などできない(身体を動かせない)状態が続き、それで床ずれができたのではないかと思うのです。
寝ている状態の時はまだマシなのですが、ベッドを起こして座らせている状態にすると、身体がぶるぶる震えだすほどの苦痛のようで、可哀想で見ていられません。
母の床ずれが治らなくて困っています。
寝たきりではないのですが(いつの間にか仰臥位に)、身体が不自由なので、起きているのは半日程度です。介護保険でエアーマットも借りていますし病院で床ずれの薬も貰っています。
一箇所が治ってくると、他の箇所にできています。へこんでいて、膿が溜まってしまい困っています。
脳梗塞で寝たきりの母(入院5ヶ月)は最近よく熱をだすのですが、仰臥位のため床ずれが数箇所あり、それによって熱が出ることもあると看護婦さんに言われました。
床擦れ(褥創)で皮膚が炎症や細菌感染を起すと発熱する可能性を知りませんでした。
患部に細菌がついて、繁殖するとそこが化膿したりして、発生した「膿」や細菌、あるいはその分泌物が血液中に混ざって熱を出すというのはごくざらにあるようです。
まとめ
仰臥位は褥瘡(床ずれ)と深い関係があります。
自分で体位変換ができず長期間の仰臥位(寝たきり)だけでなく、栄養状態が悪い、皮膚が弱くなっている(高齢者、排泄物や汗により皮膚のふやけがある、むくみが強い、抗がん剤やステロイドなど薬の副作用で免疫力が低くなっている)人も多いようなので注意しましょう。
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あとがき
仰臥位シリーズもこれで一旦幕引きです。
しかし、寝方シリーズはまだまだ始まったばかり。少し専門的な話が続いてしまいましたが、明日も引き続きお楽しみに〜